副業解禁を社員に求められるけれども・・・
日本の企業社会で、終身雇用の意識が崩れ、高い生産性の基礎となる社員の自立性や成長を企業が求めるようになる中で、社員が会社に副業を全面的に認めることを求めるのは、自然の流れです。
これまで社員の副業に対して後ろ向きであった企業が、社員から副業を全面的に認めることを求められ、その対応を検討せざるをえないことも多くなってきました。
しかしながら、社員の副業を認めるというのは、単に就業規則を改めればよいわけではなさそうです。
今、日本企業の間では、社員の副業にまつわるトラブルが増えています。
副業の類型 雇用型と業務委託型(個人事業主型)
ここで、まず、社員の副業を認める場合、その副業形態を整理しておきましょう。
副業には、大きくわけて、雇用型副業と業務委託型副業があります。
雇用型副業というのは、一次的に入社している会社との雇用契約とは別に、他の企業の社員またはアルバイトとして、雇用契約を重ねて締結する副業形態を言います。社員は、複数の会社と、重ねて雇用契約を締結することになります。
一方、業務委託型副業は、一次的に入社している会社との雇用契約とは別に、社員が個人事業主あるいは会社を設立し、業務委託の形で副業を遂行する副業形態を言います。社員は、会社員の立場とは別に、個人事業主あるいは別に設立した会社の役員になることになります。
雇用型を認めると、労務管理が非常に難解に!
会社が雇用型の副業を認めた場合、その最大の問題点は、専門家でさえ敬遠する管理の難解さにあります。まず、雇用型の副業では、働き手は副業先でも労働者として扱われるため、労災の補償や労働基準法上の保護が受けられます。加重労働の禁止という趣旨で、副業者の申告を基礎に、それぞれの企業には労働時間通算をする義務が発生します。通算した労働時間が、一日8時間を越えれば、自社の労働時間が少なくても、25%の割増時間外手当を支払う義務が発生してしまいます。
この通算計算は、社労士や税理士でも煩雑過ぎて敬遠するほど、難解です。この義務が、雇用型の副業を、ほとんどの企業が敬遠する理由です。
業務委託型は、副業社員との間でトラブル多発のリスクも!
一方、業務委託型の副業は、働き手は個人事業主となるため、企業側の負担は発生しません。しかし、会社員が、しっかりとした経営の知識もなしに個人事業主になれば、そこには、当然のように、トラブルが発生します。
確定申告を適切に行わなかったことによる脱税や、住民税の特別徴収が高額に至り、税引き後の本業の給与が激減して、副業をしたために生活苦に陥るトラブルが非常に増えています。
また、業務上の受注に対する契約の知識が不十分で、業務報酬が回収できずに、ただ働きをしてしまうようなトラブルが、非常に増えています。
これでは、本業の会社の仕事にチカラが入るはずはありません。
きちんとした準備をせずに、安易に副業に走る社員の希望で、会社が簡単に副業を認めると、その社員の生産性を著しく落とす結果になってしまうこともあるので、企業は十分に注意をしなければならないでしょう。