人材紹介業からの紹介で入社した社員が、半年後に転職して辞めてゆく! それ「転職転がし」では?
人材紹介会社の紹介で社員が入社し、半年ほど教育コストもかけて教育したのちに、突然、その社員が転職の意思を示し、辞めていった、という経験を持たれている企業様もあるのではないでしょうか?
企業側としては、人材紹介会社への手数料とともに、入社後、戦力とならずに教育した期間の給与と教育コストが、すべて損失という事態となります。
人材採用は企業にとって投資ですので、この場合、その損失分の収益獲得が、全く見合いません。
そこで、よく考えてみてください。
御社と人材のミスマッチがあったとか、御社の教育体制などがまったく伴わず、人材が不満を持っていたというならばともかく、順調に成長していた人材が、あまり強い理由もなく転職するというのは、不自然です。
もしかしたら、その事案は、人材紹介会社の「転職ころがし」の被害かもしれません。
転職ころがしとは、人材紹介会社が行政に届け出た報酬の期間終了後に、人材紹介会社が、紹介した人材にアクセスし、「もっといい条件の職場がご紹介できます」と、誘い掛け、再転職を勧めることです。再転職が成功すれば、人材紹介会社は、もとの会社と新会社から、二重に報酬を受けることができます。
そのため、人材紹介会社は、人材に「就職祝い金」と称して、新会社からの報酬の30%ほどを、バックします。
これが、転職ころがしです。
職業紹介業者の6割に、なんらかの違法状態が発覚
厚生労働省の発表によりますと、届け出を受理した人材紹介会社の6割に対し、開業後、なんらかの違法があり、立ち入り検査を実施しています。
転職ころがしは、人材への再転職の紹介ということになり、かつ、お祝い金も人材紹介の関連法が禁止する人材側からの報酬にあたりません。
人材側保護に過度に偏った人材紹介の関連法から、2010年代前半まで、転職ころがしは、合法的行為でした。したがって、もとの企業や新しい企業が、人材からのヒアリングで、転職ころがしを発見し、司法や行政に救済を求めても、人材紹介会社にサンクションを与えることはできませんでした。
現在、転職市場は、過度の売り手有利の市場になっているため、この転職ころがしが横行している状態にあると厚生労働省がみています。被害を受けたという企業の声も、多く、関係行政機関にあがりました。
2025年4月から、「転職転がし」が全面禁止に
これを受けて、2025年4月より、人材サービス機関が無期の転職者に出す「就職祝い金」が全面禁止となりました。
厚労省は、2018年に職業紹介事業者に関する指針を改正し、無期雇用者を紹介したのち、2年間の再勧奨を禁止し、2021年には、「就職祝い金」を禁止しました。ところが、当時は、求人サイトによる募集情報等提供事業が対象外とされたため、求人難が顕在化したアフターコロナ禍では、ルール違反が続出し、行政機関に寄せられる苦情も多く発生しました。
これを受けて、厚労省は、2025年に無期雇用者に対する就職祝い金は全面禁止となりました。
※有期雇用の紹介では、今後も転職転がしが止まらないと人材業界ではみられています。
「転職転がし」を防ぐには、入社した社員に対するキャリアデザイン教育が有効
一方、人材サービス機関には行政的な措置が打たれましたが、転職転がしは、サービスを受ける人材側の意識にも、問題があると指摘がされています。
次々に転職を繰り返して、ボーナスを稼ぐような軽い気持ちで、転職を繰り返す人材を「カッコいい」と考えるような、若手人材がいるのも事実です。
このようなボーナス稼ぎのような気持ちで、悪質な人材サービス業者を利用すれば、自分のキャリアを棄損し、きちんとした転職ができないキャリアを創ってしまいます。
このような転職転がしを防ぎ、優良な人材を定着させるには、入社した人材に対すキャリアデザインに対する社内教育などを行い、社員のキャリアをしっかりと形成する意識を高めることが効果的なのではないでしょうか?
以上、ご参考になれば幸いです。
続く