※このコンテンツは、2022年7月執筆時点の情報に基づいて制作されています。ご了承のうえ、お読みください。
ロシアからの、頭脳集団の脱出者
2022年のロシアによるウクライナ侵攻開始から、ロシアの人材流出が止まりません。
ロシアによる軍事進攻は、民主主義・自由主義国家の反ロシア感情を一気に高めたため、グローバルに活動するロシア人による、ロシアへの見限りが起こり、その後も、その勢いは増すばかりです。
ロシアを見限るロシア人の傾向は、高学歴・高収入者ほど高いと、ロシア人国外脱出支援団体「OKロシアンズ」は分析を発表しています。
世界のトップ企業と仕事をするには、外国製ソフトウェアの制限やネットワークの利用制限がいつかかるかわからないロシア国内では、リスクが高すぎるというのが彼らの脱ロシアの動機のようです。
一方、アメリカやEUを中心とする民主主義・自由主義陣営は、この高度人材流出を、絶好の機会と位置づけ、ロシア人の高度専門職人材を積極的に呼び込む策を打ち出しています。
米国のバイデン大統領は、ウクライナ侵攻開始後、すかさず、高学歴のロシア人のビザを取得しやすくする関連法の改正を議会に要請をしました。
これを、単なる反ロシアの平和主義戦略と考えうるのは、単純すぎるでしょう。
ロシアの国力の低下をチャンスとして、そこから流出する優秀な人材を、奪い取る熾烈な競争が、欧米の水面下で起きているとみたほうがよいでしょう。
アフターコロナの留学者が急増
ロシア人に限らず、世界では、アフターコロナで、国境を超える留学が急回復しています。
EUの域内では、国家を超えて留学をする障壁がほとんどありません。このようなEUのグローバルな留学体制を享受しはじめた世代を、エラスムス・ジェネレーションと呼びます。
EU諸国では、優秀な人材は、小学校から国境を超えて留学し、複数の言語を使いこなして、他国の優秀な学校で学ぶことも、珍しくありません。まして、社会に出た後に、リスキリングで留学をすることは、寧ろ、普通です。
このような人材教育のグローバル化が当然となった、エラスムス・ジェネレーションでは、生まれた国を超えて仕事をする人の割合が、その前の世代よりも15~20パーセント高くなっており、この世代を中心に、アフターコロナでは、リスキリングの留学者が急激に戻っているのが現状です。
日本人は世界の潮流とは逆に、内向きに
一方で、コロナ感染者数も、重症者数も、欧米とはケタ違いに少なかったはずの日本では、アフターコロナで、日本人の内向き傾向が顕著になるばかりです。
テレワーク環境の整備が進んで、世界では、留学や仕事のグローバル化が高度人材を中心に大きく進む方向に歩み出していますが、日本では、アフターコロナの留学者数は、コロナ前の15%減少と大幅に落ち込んだままです。
テレワークをグローバルなコミュニケーションや、学びの機会に結び付けるのではなく、内向きに閉じこもる閉鎖の手段として利用するヒトが、日本人には多いのではないでしょうか。
日本の人口減少による国内マーケットの縮小は、今後、避けられない事態です。企業の活動としては、高い生産性の維持と、グローバルなマーケットへの進出は不可避であるはずですが、それを担うはずの日本人は、どんどん、内向きになっていきます。
欧米のように、戦略的に外国人の高度人材を奪っていく国家的な政策なども、国政選挙の論点にすらあがってきません。
国による政策が期待できず、日本人全体の「ゆでガエル化」が加速する中、企業は、自ら独自に、外国人を含めた人材獲得戦略を独自に進める必要があるのではないでしょうか?
世界のルールを侵害して、世界から取り残されていくロシアから、優秀なロシア人が、国を見捨てていくように、日本企業もまた、シビアに日本という国の情勢を見極め、独自の生き残りの戦略をとらなければ、世界から取り残されてしまうのではないでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。
続く