インフレと、経費コスト削減の関係

人類の歴史は、インフレの歴史

日本は、1990年代の初頭から、30年間にわたる長期のデフレ期に入りました。これが、「失われた30年」と呼ばれる期間です。

その間、一時的な好況期もありましたが、日経平均株価が示す通り、このコラムを書いている2020年代初頭の時期まで、日経平均の最高額(1989年38,915円)から、遥かに安い水準にとどまっています。

日本経済のファンダメンタルズは、30年間、長期的なデフレ期でした。

1929年からはじまった世界大恐慌など、人類はデフレ期を経験をしましたが、超長期の歴史的なスパンでいうと、人類の歴史は、インフレの歴史であったことは間違いありません。

私たちが、おじいちゃんやおばあちゃんの話を聞くと、その幼い頃の話に出てくる物価が、私たちからみて驚くような安価であったことからわかるように、人類は、常に一時的なデフレを乗り越えて、超長期で、インフレの歴史を辿ってきています。

その意味で、2020年代初頭のコロナ禍を乗り超えた世界が遭遇しているインフレは、ロシアの軍事侵攻や、中国の影響などの短期的な要因があるとしても、ある意味、コロナ禍の異常な状態のポスト期の正常な自律的な反発と評価できるのではないでしょうか?

日本経済においては、失われた30年に、歴史的には異常ともいえるデフレが長期的に進行していました。そのため、日本の経営者やビジネスパーソンは、デフレ慣れをしてしまっており、インフレに対応する力を、今、失っているのではないでしょうか?

2020年代のポストコロナ期は、おそらく、世界的な潮流の一つとして、日本経済が、30年にわたって続けてきたデフレ期から、インフレ期に変換する大きなターゲットポイントになるのではないかと思われます。

そうだとすると、企業の経営者やビジネスパーソンは、デフレに慣れた思考法から早期に脱却し、インフレ期の経営思考法に切り替えをしなければならないのではないでしょうか?

企業のコスト削減は、インフレでは非常に難しい

長きにわたって続いてきたデフレでは、物価は安定し、売価は上がりにくかったわけです。売価があがりにくければ、多くの企業の売上は頭打ちになり、赤字や業績不振は、寧ろ普通のことと認識されます。赤字を出しても、業績が伸びなくても、経営者の他の経営者も同じであるため、さして、無能のそしりを受けないで済みます。能力のない経営者は、業績の悪さを景気やデフレのせいに転嫁することができます。

一方で、物価が安定し、場合によっては下がっていきますので、仕入れや販管費を見かけ上抑えることは、比較的容易いのが、デフレ下の時代です。

赤字を出しても、業績不振でも、部下に経費を抑制させさえすれば、企業は、一定期間、存続ができるのが、デフレ下の時代です。

デフレ、そしてデフレと同時に進行する不況は、ある意味、経営者の能力とは関係なく、体力さえあれば企業を存続させやすい時代を意味します。

そして、不況下では、政府の救済策も発動されるため、本来であれば倒れるはずの企業も存続を続ける、企業のゾンビ化現象が発生します。本来なら死んでいる企業が、動き回り続ける現象です。

日本は、この30年間、このようなデフレが続きました。逆をかえせば、30年間、経営者にとっては、リアルにその能力を問われず、ぬるま湯につかって生き延びやすい時代だったといえるのです。

しかし、日本は、30年ぶりに、インフレ基調の時代に戻ろうとしています。

インフレは、物価があがります。しかし、物価があがるということは、所得が物価上昇と直結しない低所得の消費者や年金生活者の生活は苦しくなります。

ですから、物価の上昇を安易に価格に転嫁すれば、一気に売れなくなる時代といえます。
価格をあげるためには、消費者が高くても購買する商品やサービスでなければなりません。

消費者の選別は厳しくなり、そのような商品やサービスを作れる企業と、漫然と価格転嫁を行う企業との間に、大きな勝ち負けの格差が発生します。

つまりは、経営者の能力によって、ドラスティックに企業の業績に差異が出てくるのが、インフレ下の時代です。

そして、負け組企業が、仕入れや販管費を抑制しようとしても、物価があがっているため、デフレ下のように抑制が効かなくなります。

企業の勝ち負けがはっきりし、格差が発生し、それにあわせて、労働者が流動化する時代が幕をあけたというのが、デフレからインフレへの転換です。

インフレ時における経営戦略は、マーケティング戦略と成長戦略に軸足を置く

デフレは不況と同時進行します。

景気が悪い時期というのは、経営者は業績の悪さを景気に責任転嫁できる時期ともいえます。まして、コロナ禍においては、コロナウイルスのせいで業績が上がらないと言っていれば、国から支援金も受け取れ、金融機関も支援的な貸し付けをしてくれます。

一方、インフレ期は、その逆の潮流に入ります。

物価があがり、その物価高にあわせて業績をあげられるかどうかは、経営努力にかかってきます。企業の業績格差は更に進み、金融機関もマネーサプライを絞る日銀の政策の影響で、断然、貸出の条件は厳しくなります。

インフレ期は、経営者と企業の本当の実力が試され、誰にも責任転嫁ができない時期といえましょう。デフレ期には封印しがちであった成長戦略をとらないと、生き残りが難しくなるのが、インフレ期だといえましょう。

日本のビジネスパーソンは、失われた30年の中で、デフレに慣れてきました。
そのデフレ発想を、この転換点で改めることが、必要とされています。

以上、参考になれば幸いです。

続く

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