健康診断での胃の検診
企業で働くサラリーンにとって、年に一度の「行事」、健康診断。
健康診断は、労働安全衛生法によって実施が会社に義務付けられています。筆者も若い頃、面倒な健康診断を受けたくないと、会社に言い張って、総務の担当の方から「駄目です、受けてください!」と注意されたことがありました。会社は、この義務に違反して、労働者に健康診断を実施しないと、50万円以下の罰金を課せられてしまいます。
さて、この健康診断で、昔から、受信者を一番、悩ませてきたのが、胃の検診ではないでしょうか?
まず、バリウムを呑まされます。
冷えていない、シェイクのような、あの奇妙な液体。
「ちゃんと、冷やしてくれていれば、呑みやすいのに・・・。」
と思ったのは、筆者だけではないと思います。
そして、更に、検診が始まると、台を傾けられ、受信者は必死に台の横の棒につかまり、さらに、指示に従って、ぐるぐる回転をさせられます。
そして極めつけは、下剤を呑んで、あの白い液体を、トイレで出し切らねばならないという、あの「惨めさ」。
筆者などは、ある時、下剤を呑む量を少なくしたため、数日にわたり、便が出なくなり、苦しんだ経験があります。
さて、この胃のバリウム検診。今でも、会社で検診車両がやってくるところでは、実施していると思いますが、一方、検診センターなどに行って、健康診断を行うところでは、個人が実費を負担して、内視鏡検診に変えられる場合が多くなってきました。
しかし、内視鏡で検診を受ける場合、
「実費がかかるけど、検査の精度って、どうなの?」
「胃カメラって、辛いんじゃないの?」
このように思っている皆さん、多いのではないでしょうか?
そこで、今回は、健康診断の検診の、バリウム検診と、内視鏡検診、その違いを、発見の精度を含めて、語ってみたいと思います。
胃癌の発見率
まず、胃の検診の最も重要な目的は、胃癌の早期発見です。
結論から言うと、胃癌の早期発見率は、内視鏡検診が、バリウム検診より、優れています。その理由は、胃の前側(前壁)部分を、バリウムで描出することが困難であり、この部分の胃癌を見逃すリスクが高いためです。
一方、スキルス胃癌については、バリウム検診のほうが発見しやすいと言われています。
しかし、スキルス胃癌は、進行癌であり、早期癌ではありません。健康診断の目的は、進行癌の発見ではなく、早期の癌の発見と早期の対策を促すことなので、この点では、健康診断での方法としては、内視鏡検診のほうは目的にあっているというのが、医学界の定説となっています。
上記の医学界の定説は、臨床医の定説であって、学術論文上では、今のところ、バリウム検診と内視鏡検診に癌の発見率の差がないというのが通説です。バリウムでは、早期発見率が低いが、その一方で、進行癌の発見率が高いため、統計数値上、バリウムと内視鏡で、癌自体の発見率に差がないというのが、医学上のデーターであるため、バリウム検診も、行われているのです。
咽頭・喉頭・十二指腸評価
別の観点から検討してみましょう。胃癌の観点から、視野を広げてみます。そうしますと、バリウムの検査には、内視鏡検査に比べ、大きな弱点があります。それは、検査が胃部に限定され、内視鏡のように、咽頭・喉頭(のど)及び十二指腸の評価ができないという点です。
内視鏡は、口から内視鏡をいれるので、検査が広くできる点に、バリウム検査と比べて、大きなメリットがあります。その結果、内視鏡検査で可能な、食道癌や咽頭癌などの発見が、バリウム検診ではできません。
安全性と苦痛
そして、次は、受信側の安全性と苦痛の比較です。
バリウム検査には、先に執筆者の感想で述べた通り、バリウムに伴う苦痛があります。そして、安全性という観点からいうと、放射線を受けるため、放射線被ばくが発生するということです。
妊娠の疑われる方には、バリウム検査はリスクが高いものになりますし、癌が疑われた場合に、繰りかえして再検査を行うことができません。
一方では、内視鏡検診は口から内視鏡をいれるため、苦しいのではないかという指摘があります。これは、入れ方や麻酔の投与によって変わります。麻酔を投与しての検診をすると、麻酔が醒めるまで受診者を休息させる必要があります。そうすると、そのスペースが必要となりますから、集団健康診断ではそれが難しいのです。そのため、苦痛があるようです。
ですから、内視鏡検診の場合の苦痛如何は、その検査の状況によってかわってきます。
かかりつけの主治医の病院または医院で、予約をして計画的に行う内視鏡検診では、ほとんど、受診者に苦痛がありません。
何故、バリウム検査がいまでも、会社の検診で行われているのでしょうか?
このように書いてくると、バリウム検査よりも、内視鏡検査のほうが、勝っているかな、と感じると思います。
しかしながら、会社の健康診断で、会社に検診車が来てくれる検査の場合、バリウム検査が、今でも行われています。何故でしょうか?
それは、圧倒的に、バリウム検査のほうが、内視鏡検査に比べて、スピード検査が可能で、コストパフォーマンスに優れているからです。
大きな会社内で検診を行うには、社員数が多いため、検診に出張してもらい、会議室などを使って検診を実施します。そうすると、胃部の検診では、検診車がやってきて、会社の近くに停車し、ここで、バリウム検査をするのが、圧倒的に速いわけです。その結果、コストも安くて済みます。
一方、内科医での胃癌検診などでは、上記の発見率の問題で、バリウム検査を廃止するする医師が増えています。
皆さんの会社の健康診断では、いかがでしょうか?
総務の皆さんが、社員の健康を重視されるなら、会社負担が発生しても、社員に、バリュウム検査ではなく、内視鏡検査を、一律に健康診断に導入することを検討することも、大切かもしれません。
癌は、早期の発見で、治癒が期待できる時代です。発見がおくれれば、命にかかわることもありますので、是非、検討をしてみてください。
以上、参考にしていただければ幸いです。
続く
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