株式会社で監査役を設置しなければならない場合とは?

会社の機関は、商法時代にくらべて、相当に自由になった

会社法が成立する以前、企業法の基本法典は、商法でした。

法科大学院制度ができる以前の司法試験では、論文試験の必須科目に「商法」があり、その出題の2問の内訳は、主に、現在の会社法にあたる商法の分野が1問、手形法を主な内容とする有価証券法が1問で、構成されていました。

つまり、当時、商法は、企業法務に、非常に重要な六法のひとつだったわけです。その後、会社法が商法から独立し、いまは、商法典は、抜け殻のような法律になってしまいました。

この会社法が、商法から独立した時点で、株式会社が、非常に自由に設立できるようになり、その中枢である機関設計の自由度も格段にアップしました。

会社法時代における、監査役の重要性

それでも、今の会社法の機関設計にも、守らなければならないルールがいくつかあります。

その一つが、ここで述べる監査役の設置に関わるルールです。

かつて、監査役は、「取締役よりちょっと偉くない総務役員」のように扱われた時期もありました。

しかし、企業のコンプライアンスが重視されるに従い、その職務は非常に重要かつ責任のあるものになり、一定規模の企業とって、資金調達に不可欠な存在になりました。

ここでは、この監査役を設置しなければならない場合や、監査役を設置しないと、その次に設置できない機関など、監査役に関するルールを書いて参ります。

取締役会設置会社は、監査役が必須機関

まず、監査役の設置について、とても重要なルールは、取締役会設置会社には、監査役の設置が義務付けられているという点です(会社法327条1項1号)。

設立時の原始定款で取締役会設置会社を選択すると、このルールの関係から、監査役を定款で設置の記載をしませんと、公証人の定款認証が受けられず、会社設立自体が不可能になります。会社の法人格取得に必要な定款が成立せず、したがって会社の設立登記もできません。

一方、定款は、設立後の変更には、公証人の認証が必要でありません。

そのため、設立時に取締役会をおいていない会社が、取締役会設置会社に定款を変更しようとすると、取締役会設置会社に要求される大規模な内容の定款変更を、企業の代表取締役は自己責任で、行わなければなりません。もし、会社法の規定に違反するような定款変更を行ってしまうと、公証人のチェックも効かず、大変なことになってしまいます。

定款を取締役会設置会社に変更し、監査役を設置しないような定款変更を行ってしまうと、会社の根本規則である定款に違法が生じてしまう結果、定款に従って行動をしなければならないような会社の重大な問題が発生した段階で、定款が違法になってしまい、会社の存続が危うくなってしまいます。

また、会計監査人を設置する場合、監査役か、三委員会・執行役のいずれかが必要です。

三委員会設置会社は、巨大な大企業の機関設計ですから、普通の代表取締役が設置される会社の規模では、採用は難しいので、会計監査人設置会社は、ほぼ、監査役設置会社ということになります。

会計監査人は、大会社には必須の機関となりますので、監査役を設置していなければ、大会社に到達することは不可能ということになってしまいます。

会社法は、会社の規模に応じて、機関設計の選択肢を設けています。

換言すれば、現在の会社法では、会社が成長するのであれば、蛇が脱皮して大きく成長するように、機関設計を脱皮して、大きくならなければなりません。

監査役は、その脱皮の仮定で、キーになる役員ということになりますね。

以上、参考になれば幸いです。

続く

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