20代の外出率が70代を下回るという現実
国土交通省の調査によれば、休日の外出率は20代が47.6%、70代が54.4%と、若年層が高齢層を下回る結果となっています。
コロナ禍が明けても、この傾向は十分には戻っていません。
単なる行動様式の変化として片づけることもできます。しかし、私たちは経営の視点から、この数字をどう解釈すべきでしょうか。
問題は「移動の量」ではなく、「移動の質」である
移動の減少は、単に外出回数の減少ではありません。
移動は、偶発的な出会いを生みます。
移動は、異質な価値観との接触を生みます。
移動は、一見非効率に見える時間の中から創造性を育みます。
道に迷う。予定外の人と話す。議論が脱線する。
こうした「非効率」の中からこそ、新しい発想や挑戦が生まれます。
文明の進化は、効率の積み重ねではなく、異質性との摩擦から生まれてきました。
もし若い世代が、効率を優先し、移動を減らし、偶発性を避ける傾向にあるとすれば、それは単なる生活スタイルの変化ではなく、創造の源泉の縮小を意味する可能性があります。
テレワークは効率化か、進化か
コロナ禍後、多くの企業で出社を巡る議論が起きました。テレワークは、業務効率の向上や生産性の平準化に貢献しました。
一方で、組織としての進化力はどうでしょうか。
チームがリアルに集まり、顔を合わせ、顧客を直接訪問することで得られる刺激や学習機会は、オンライン環境で完全に代替できるでしょうか。
効率の最大化と、進化の最大化は、必ずしも一致しません。
経営は、「短期の効率」を選ぶのか、「長期の進化」を選ぶのかという選択を迫られています。
経営に問われているのは「移動をどう設計するか」
重要なのは、出社か在宅かという二項対立ではありません。
問われているのは、
• 偶発性をどう組織に組み込むか
• 異質性との接触をどう意図的に設計するか
• 非効率の中から創造を生む余白をどう確保するか
という経営設計の問題です。
若い世代の行動様式が変わる中で、企業が移動や対面を単なるコストとして扱えば、組織は徐々に摩擦を失い、やがて進化力を失います。
統計は未来の予兆である
20代が70代よりも移動しないという事実は、単なる世代論ではありません。
それは、日本企業の10年後、20年後の姿を映す予兆である可能性があります。
経営とは、環境の変化を受け入れることではなく、環境の変化の中で、進化の条件を再設計することです。
移動を減らす社会の中で、
私たちは、創造性と挑戦心をどう守り、どう育てるのか?
その答えは、制度ではなく、経営の思想にかかっています。