企業の中での、賢い中高年者活用の場 ~モダンエルダーを活用した「青銀共創」発想へ~

労働人口減少の中での、企業の今後の成長は、中高年の賢い活用にかかっている

日本の雇用慣行の中で、定着した、新卒一括採用。

これに代表される、労働者を毎年毎年、継続的に雇用し続ける制度は、急速に時代にあわなくなりつつあります。

まず今後、更に深刻化する人口減少で、新卒者数は減少の一途を辿ります。

一方、新卒者を、大企業の人事部門同士が競争のように奪い合ってみても、受け入れる企業側では、テレワークなどの高度な利用を並行導入した、個別の社員の生産性を重視する組織制度が進行し、OJTは、新型コロナ禍前のようには機能しません。

新卒者が、自然に社風に染まり、現場の中で力をつけていける環境に、企業はもう完全には戻りません。

採用者の中で、自立して力を発揮できる少数の社員と、立ち往生する多数の社員が出現し、その生産性の差が開くことは、予想に難くありません。

一方で、時代はVUCAに突入しました。

企業の外部環境の激変や競争環境の激化は、企業の販売管理費に、シビアな見直しのメスを入れる時代です。

企業が、莫大な固定費を抱えることが、成長の源泉である時代から、極めて高いリスクとなる時代に変わりつつあります。

長期的な視点で、立ち往生する社員を見守る余裕は、多くの企業にはなくなるでしょう。

企業は、正社員の採用に慎重になり、生産性をあげることができる若手を、シビアに選別する時代になるでしょう。

この時、その若手と、雇用期間が延びる中高年者とのシナジーを図り、企業全体の生産性を上げ続ける試みが、必須になってきます。

裏をかえせば、定年退職を見直して、企業に長くいていただく中高年者を選定し、生産性の向上に貢献できる選定された若手と、コラボレーションさせる仕組みが、今後の企業の成長に欠かせません。

これが、欧米で提唱されている「モダンエルダー」の人事選定方式であり、一方、台湾の経済界発祥の「青銀共創」の発想です。

モダンエルダーとは何か?

若手の採用者を選別し、その中から自立して仕事を進めて生産性をあげられる個を採用したとしても、その個を放置しておいて、勝手に彼らが企業の成長に寄与するわけではありません。

若者の中には、優れた才能を持ち、あるいは、多くの知識や専門的な技術を教育によって身に着けた者がいます。

しかし、欧米社会のように、彼らの才能や知識・技術を活かすことに長けた社会であっても、彼らが、そのままで企業の生産性を向上させ、企業の優れたマネジメントに育つとは考えていません。

彼らには、圧倒的に経験が不足しており、人生を長く生きた智慧が不足しているからです。
一方、企業社会に長く籍をおき、年齢を重ねた人の中には、「賢い年長者」がいます。

これが、今、欧米社会の経営現場で注目されている、「モダンエルダー」です。

モダンエルダーには、5つの要件が必要といわれています。

  1. 経験から得た判断力で、問題に上手く対処できる
  2. 直感的な洞察力で、雑多な情報から根源的な課題を瞬時に見分けることができる
  3. 自分の感情を理解し、他者の気持ちをコントロールし、喜怒哀楽の感情を戦略的に用いることができる
  4. 物事を俯瞰し、その核心を掴むことができる
  5. 人生経験を役立て、若者に前向きな影響を与えることができる

お読みいただいてわかる通り、中高年者だからといって、誰もがモダンエルダーであるわけではありません。

若者だからといって、誰でも、才能と知識・技術に優れた自立した個であるわけではないのと、同様です。

しかし、若い、才能・知識・技術に優れた個と、このモダンエルダーが社内メンターとして働くことで、強い組織が生まれる、というのが、モダンエルダー論です。

企業は、応募者の中から、才能・知識・技術に優れた個を選び出し、更に、組織の中にいる長年の経験を積んだ個の中から、モダンエルダーを選び出す必要があります。

この、双方を組織にいれて、組織構成を図り、その組織に自律性を与えて、企業のマーケティングとイノベーションを図ることが、VUCA時代の不安定な企業経営の要であると、世界は、今、考え出しています。

このようにして生まれた組織が、台湾の経済界発祥の「青銀共創」という組織です。

洋の東西に関わらず、今、世界は、VUCAに至った不安定な時代に、あるべき経営と組織論を、必死になって模索をしているのです。

中高年の早期退職の注意事項

このように、モダンエルダーは、若い個の経験不足を補う役割として、欧米では注目をされています。

一方、企業が早期退職を募った場合、このモダンエルダーほど、早期に退職し、ベンチャー企業に移って、次の活躍の場を見つけてしまいます。

中高年者が誰でも、モダンエルダーではないため、早期退職を募ると、今後、若手の経験不足を補って、企業の健全な進化をもたらすことができるモダンエルダー人材ほど、流出をしてしまうことに、注意を払う必要があると、最近の欧米企業や、中国企業は考えています。

若手が、知識や技術の勢いに任せて前のめりになりすぎると、進化が起きる反面、企業の屋台骨を揺るがすような失敗をしてしまう可能性があることも、最近の欧米社会や中国社会では注目されています。

その失敗を喰いとめ、豊かな経験で健全に企業の進化を導くために、モダンエルダーが企業には必須です。

早期退職希望者募集などを実行する際、この点を注意しておく必要があると思います。

以上、ご参考になれば、幸いです。

続く

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