テレワークが齎す、少子化の劇的な進行
日経新聞 2021年5月25日号は、2021年の出生率が、過去最小を更新、通年で戦後初めて80万人を割り込む可能性がでてきたと報じています。コロナ禍での出産控えや、婚姻の先送りが相次いだことが原因と、日経新聞は報じています。
新型コロナの妊婦や胎児への影響が不透明であり、かつ、出産で病院に行くことを控えたい、あるいは、出産に父親が立ち会えないなどの要因があり、それが心理的な圧迫要因となったのでしょう。
日本の、世界で最も速く進んでいる少子化が、更にコロナ禍で加速をしたのですから、これは、日本社会にとって、深刻な問題です。
しかしながら、この問題には、更に、根深い問題が潜んでいます。単に、コロナ禍で、出産が控えられただけであれば、アフターコロナでは、数値が改善されるでしょう。
問題は、コロナ禍で、同時に、出産の先行指標となる婚姻数が、大幅に減少していること。更に、「密」の回避や、出会いの場の喪失で、結婚適齢期の男女の恋愛それ自体が大きく減少しているという、根深い問題があります。
出産というのは、その前に結婚があり、結婚の前には、適齢期の男女の出会いと恋愛があります。確かに、飲食業や、旅行業が、大打撃を受けている今、男女が恋愛関係を育むのは、非常に難しいかもしれません。婚活サイトがいくらあっても、その出会いだけで、即、結婚相手を決めるヒトは、まずいないでしょう。コロナ禍が、既に1年以上長引いていることから考えれば、適齢期の、特に女性が結婚をするタイミングを逃していることは間違いないでしょうから、最終的に、それが、出生率を長期的に引き下げることに繋がるのは、容易に想像できます。
職場恋愛が、戦後、日本人の最大の結婚の出会いの場だった!?
さて、我々、企業の世界にこの話を落としてみましょう。この話は、企業として、無関係な話題ではありません。
一定規模以上の企業の中には、多くの適齢期を迎えた男女の従業員がおり、その結婚という問題は、安定的な社員の雇用という面から、無視できない問題であるからです。
戦後日本の企業は、新卒一括採用という手法で、毎年、新卒者を定期・定量採用し、その戦力を、終身雇用制を基礎に、長期的に発揮させることで、成長を遂げてきました。
その中で、企業という場所は、仕事をするだけでなく、若い社員たちに、「職場恋愛」という、出会いの場を与えてきたことは、紛れもない事実です。実際、我々の周囲には、職場で出会って結婚をして築いた家庭が、たくさんあります。読者の方も、御自身や周辺で、このようなご結婚をされた方がたくさんおられると思います。
企業の管理職(課長や部長)になれば、部下同志の結婚の仲人をしたり、結婚式でスピーチをするということは、ある種の管理職たるものの、ある種の仕事のようなものになり、管理職であれば、「毎月連続する、部下の結婚のお祝いの出費の多さにアタマを痛めた」経験は、誰でもあるのではないでしょうか(笑)?
つまり、職場というのは、男女の大切な出会いの場でもあり、職場内カップルは、職場に知られないようにしながら愛を育んで、一気に、職場で結婚を発表し、上司や周囲の同僚を驚かす、ということで、結婚というゴールに辿り着くわけです。
このような職場の機能は、今、コロナ禍を通して、危機的な状態になったと言えるでしょう。
テレワークは、定例的なコミュニケーションのツールとしては機能しますが、テレワ-クで、男女が愛を育むのは、極めて難しいと言えます。テレワークは、新常態として、アフターコロナ禍でも、職場に定着するでしょう。そして、職場では、おそらく、コロナ禍が去っても、マスクは、必需品となり、誰もが、マスクで顔の下半分を隠す生活が定着するでしょう。
マスクというツールは、昔、流行った、都市伝説の「口裂け女」(すみません、相当、昔のネタで、筆者の年齢がばれてしまいそうですが)ではないですが、ヒトの本当の素顔を覆い隠すという機能を持っているものです。
男女が、常にマスクをつけて生活をする社会は、言い換えれば、お互いの本当の素顔を覆い隠す社会でもあります。このような社会では、人間関係は希薄化し、コミュニケーションは、表面的になります。テレワークと、マスク、そして、社会の飲食などの交流の減少は、確実に、企業社会に、人間関係の希薄化を齎すでしょう。そうなれば、考えられる最も大きな変化は、職場恋愛の激減ではないかと思うのですか、皆様、そう思われませんか?
職場で、コミュニケーションを考える時代に
これまでの日本企業では、職場恋愛などというものは、若い社員同志が勝手に、会社に隠れて行うものであって、何かの拍子に、これが社内で知れ渡った場合、人事部門としては、二人を別の部署に、こっそりと異動させる、といったような配慮をしてきたわけです。いわば、職場恋愛なるものは、非公式で、本人たちが、「大人」としての配慮をして、自己責任のもとで行うもの、ということで、人事的には片付けられていたものだったのです。
しかし、現在のように、社会的に、深刻な少子化時代を迎え、子育て女性の働き方に配慮する企業が、「くるみんマーク」の対象として、新卒就活生の重要なチェックポイントになって来るような時代に至ると、会社としては、若手社員の「出会い」というものにも配慮しなければならなくなるかもしれません。
実際、独身者の転職率は、確実に、既婚者の転職率よりも高いのです。社会的な責任の自覚という観点からも、従業員の結婚は、企業としては、無視できない企業人事戦略事項であるわけです。適齢期の男女が、職場の中で、出会えないという企業が、若者の評価を下げる可能性すらあります。
実際、コロナ禍前でも、「うちの職場は、同性ばかりで、出会いがない。」という職場は、就職先として、男性にも女性にも、味気のない職場と思われて、暗に敬遠されていた事実は、見逃せないでしょう。
「テレワークばかりで、全く出会いがない仕事」
長期的にみると、こんなマイナス評価が、離職率を高めたり、入社志望者の辞退率を高めたりすることも、今後は、ありえるかもしれません。
オフィス機能に、コミュニケーションを高める工夫を導入する
新型コロナ禍が終息に向かう中、テレワークと、出勤を、バランスよく検討すると同時に、社員同士のコミュニケーションの場の創出の工夫などを、会社が行うことも重要になるかもしれません。
全社員の会議や総会などの後のパーティなどや、社員運動会を復活させるなどの、ソフト面の施策も、重要になるかもしれません。テレワークが多くなり、希薄化した人間関係は、決して、長期的な生産性をアップさせたりはしません。
同時に、オフィスに、あえて、社員同志が、気軽にコミュニケーションを楽しめるような空間を、オフィシャルな会議室などとは別に設定することも、よい方法かもしれません。
オフィス全体をフリーアドレスにするのは予算的には大変でしょう。しかし、オフォスの中に、コミュニケーションのための、「遊びのある」スペースを設けることは、テレワーク時代の、重要な施策になるかもしれません。
オフィスの、緊張感と「遊び」の空間の共存というテーマで、フォーワードでも、小さなご提案も可能です。是非、フォーワードの営業マンにお声がけください。
以上、参考になれば光栄です。
続く