会社で海外送金をすることになった時に読むコラム

海外送金のシステムには、見慣れない言葉が使われている

海外送金や為替手形の取り扱いに慣れている総合商社でなくても、最近は、会社の総務や経理部門で、海外送金をしなければならなくなることがあります。

国内だけで仕事をしている経理部門が、はじめての海外送金をすることになり、取引銀行の担当者と相談をして、海外送金サービスを使うことになった場合、そのサービスのシステムの中には、普通の銀行ネットバンキングとは異なる、見慣れない言葉が使われています。はじめての方は、まずは、その言葉に戸惑うでしょう。

そして、何よりも、送金をしてみたら、その手数料の高さに、びっくりしてしまうことがあると思います。

今回は、国内のネットバンキングと異なる、海外送金システムの事情について、語って参ります。

銀行の海外送金システムの仕組みと、その手数料が高い理由

まず、目につく言葉で、見慣れないのが、「仕向銀行」という言葉です。

総合商社のように、海外送金を繰り返す会社の場合、送金の方法は、電子送金か、送金小切手を使うことが殆どです。

はじめて海外送金をする会社が、取引銀行の海外送金システムを利用するのは、このうちの、電子送金の方法です。

海外電子送金をする場合、送金依頼者が送金を依頼する銀行のことを、仕向銀行と呼びます。これに対して、相手国で、送金を受け取る銀行は、被仕向銀行です。

国内の銀行送金取引の場合、国内の銀行は、すべて全国銀行資金決済ネットワークという仕組みに加入しているため、この2銀行だけで送金が完了します。

これに対して、国際送金の場合、「世界」銀行資金決済ネットワークのような仕組みを使います。この仕組みが、SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)です。

送金依頼者は、まず、支払銀行のSWIFTコードを確実に、受取人から聞き取る必要があります。日本国内送金のように、銀行名と支店名と口座番号を聞き取れば、送金できるということに慣れていると、これを、聞き落としてしまい、送金ができなくなりますので、注意が必要です。

そして、仕向銀行と被仕向銀行の間が直結しているわけではないのが、国際送金の仕組みです。

この間に、中継ぎをする銀行が入ります。この中継ぎをする銀行は、現在、ほとんどが、アメリカ合衆国ニューヨーク州のウオール街にある銀行です。

この銀行が入り、少なくとも3銀行が手続きを行うため(被仕向銀行によっては、中継銀行が2行入ることもあります)、国際送金の手数料は高額になるのです。そして、この手数料が、送金時には不明で、後から判明するという、非常にやっかいな仕組みです。

送金した資金がなくなった、というトラブルの原因

つまり、日本企業が、日本の銀行から、例えば、香港の銀行に口座のある企業に送金をする場合、日本の銀行と香港の銀行の間で、送金手続きが行われるのではありません。

その間に、アメリカにある中継銀行が入り、アメリカにある中継銀行の口座で、両銀行の送金のための決済手続きが行われているのです。

実は、日本から香港にオカネを送ったつもりでも、実はその業務は、アメリカのニューヨークで行われているのです。

そのため、国際送金のためのSWIFTコードを間違えて仕向銀行に伝えてしまうと、この中継銀行で手続きがとまってしまいます。そのため、受取人から入金確認ができない旨の連絡を受けとり、慌てて、仕向銀行と支払銀行に問い合わせても、どこで手続きがとまっているのかわからず、送金の資金が遺失したと勘違いしてしまうことがよくあります。

仕向銀行の口座からは資金が引き落とされ、一方、支払銀行の口座には、待てど暮らせど、入金がないからです。

この場合は、慌てずに、中継銀行を調査することで、手続きがとまっている原因を突き止めることができます。

この中継銀行でトラブルが発生した場合、アメリカにある中継銀行を、きちんと調査してくれる仕向銀行(勿論、この調査は英語で行います)に、送金取引を依頼することが、企業の経理担当者が気をつけなければならないことです。

取引実績があまりない仕向銀行に送金依頼をして、アメリカにある中継銀行で手続きトラブルが発生してしまうと、手も足もでなくなってしまうことがあるのです。

民間の国際送金サービスを利用することの可否

銀行送金の場合、中継銀行でのトラブルを除き、送金にミスが発生することは、皆無です。

一方、この手数料を安く抑えるため、民間の国際送金サービスを利用することはどうなのでしょうか?

手数料からみると、民間の国際送金サービスは格安です。

しかし、結論的に言いますと、少なくても、企業の総務や経理の担当の方が、会社の仕事として送金をする場合には、民間の国際送金サービスや、ビットコインなどの仮想通貨を利用した送金サービスは、現時点では、行わないほうが無難です。

民間の国際送金サービスの殆どは、実際には送金をしていません。

例えば、日本から香港に送金をするサービスの場合、日本の資金受取元の会社で、日本円を回収し、それとは別に、香港の資金支払元の会社で、香港ドルを渡すのです。

つまり、送金を行っておらず、日本と香港で、一方は受取専門、一方は支払専門となっているだけで、手数料を取っているのです。送金を行っていないのですから、手数料が安いのは当たり前です。

そうすると、当然、一方に資金が溜まり、一方では資金が減り続けるわけです。この仕組みのため、国際送金会社の中には、マネーロンダリングに深く関係している組織があると言われています。

2001年に発生したアメリカの同時多発テロでは、ニューヨークとソマリアの間の、民間国際送金サービスを装ったアルカイダが、アメリカからソマリアに送金する労働者の資金送金を利用して、アルカイダがソマリアに持ち込んだ資金を活用し、ニューヨークで極秘裏にドルを蓄積し、その資金でテロが実行されました。

このようなことから、民間国際送金サービスには、今、各国の監視の目が光っています。そのため、一つ、間違えると、企業の送金がテロなどのマネーロンダリングに利用されてしまうなどのリスクがあります。

もし、このようなことが起きれば、突然、支払い先の会社が閉鎖されてしまい、資金が喪失してしまったりするリスクがあります。このようなことが起きてしまえば、総務や経理の担当者は責任問題になってしまうでしょう。

手数料の節約どころの話ではなくなり、会社の資金が本当に喪失した責任問題になってしまいます。外国の会社に閉鎖されてしまうのですから、まず間違いなく、回収は不可能です。

便利なサービスの中に、リスクが潜んでいるということを、現代の企業社会の担当者の方は、よく認識しておく必要がありますね。

以上、参考にしていただければ、幸いです。

続く

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