期中の代表取締役の報酬アップは、損金計上ができません
「会社の社長になって、会社が儲かれば、社長って、ボーナス、貰い放題なんだろうな?」
サラリーマンの方は、自分の賞与の明細書をみながら、溜息をつくことがあるかもしれません。
でも、実はそれ、日本では違うのです。
日本では、代表取締役社長が、賞与を受けとることは、会計上は可能です。株主総会の承認を受ければ、会計上の費用として、役員賞与は計上できます。
しかし、期中に、利益がでたからといって、臨時株主総会を開いて、代表取締役の賞与の承認を受けても、その費用は、税法上の損金として計上ができません。
つまり、株主からは、
「よく頑張ったから、ボーナスを出してあげよう」
と認められても、税務署は、
「そのボーナスを支払ったことにしないで、その分の法人性を課税します。」
と言われてしまうことがあるのです。
このような損金否認を受けると、会社は、仮に100万円の賞与を代表取締役に支払うとすると、その分は益金として加算され、法人税・法人地方税をあわせて、約35%分の税金を、支払わなければなりません。
つまり、会社は、(法定福利を除いても)、実際には135万円の現金がキャッシュアウトしてしまいます。
これは、代表取締役が、会社の売上アップを利用して、お手盛りで自分に賞与を出し、利益操縦を行い、法人税を免れることを防止する趣旨の決まり事です。
実は、代表取締役の報酬というのは、賞与だけでなく、給与も、年度の途中で変更すると、損金に算入できないという、非常に使いにくいシステムになっているのです。
儲かったから、臨時ボーナスを出すよ、と、従業員には言えますが、自分には出せないのが社長なのです。
注意しなければならないのは、売上が落ちて、自分の報酬を減額しても、減額がなかったとして法人税が課されるのが、社長の報酬なのです。
代表取締役の役員報酬を、損金計上する方法
では、代表取締役(取締役の従業員報酬部分を除く役員報酬部分も同様です)の報酬の増減分の費用を、法人税務上の損金として計上し、法人税や法人地方税を圧縮するためには、どのような方法をとる必要があるのでしょうか?
最も確実な方法は、期首から3か月以内に、増減させた取締役の報酬の振込みを開始することです。
取締役の報酬の決定は、株主総会の議決が必要です。
通常は、前期の決算書を承認する株主総会で役員報酬の決議をすることになります(取締役会設置会社の場合、株主総会で報酬額の総額を決議し、更に、取締役会で分配を決議します)。
従って、期首から2か月以内に株主総会の決議をし、その月の報酬分(通常、2か月目の報酬は一か月後に支払いますので)を3か月めで支払う手続きを踏めば確実です。
取締役役員報酬というのは、自由にしてしまうと、利益操縦を自由に自分の報酬を使ってできってしまうため、非常に堅苦しい歯止めが科せられています。
従って、中小企業の賢いオーナー経営者は、役員報酬の金額を控えめにし、その分を、別の形(例えば、交際費や出張手当など)で、受取る仕組みを採り入れるのです。
以上、ご参考になれば、幸いです。
続く