社長になると、ボーナスが貰えないって、本当?

期中の代表取締役の報酬アップは、損金計上ができません

会社で頑張って仕事をして、年に2回支給されるボーナスが、予想よりも少なかった、という方は、こんな風に思うのではないでしょうか?

「会社の社長になって、会社が儲かれば、社長って、ボーナス、貰い放題なんだろうな?」

サラリーマンの方は、自分の賞与の明細書をみながら、溜息をつくことがあるかもしれません。

でも、実はそれ、日本では違うのです。海外の経済誌の記事などでは、アメリカの経営者が巨額の役員報酬をうけとっているという報道を目にすると思います。一方、日本の企業の経営者は、それと比べて格段に報酬が低いのです。

そして、驚くことに、日本の社長さんたちで、ボーナスを受け取っている人は、ほとんどいないのです。

もちろん、日本でも、代表取締役社長が、賞与を受けとることは、会社法などの企業法務上と、財務会計上では可能です。

取締役の報酬は、株主総会の決議事項ですが、臨時株主総会を合法的な手続きによって開催し、株主総会の承認を受ければ、会計上の費用として、役員賞与の計上は可能です。

しかし、期中に、利益がでたからといって、臨時株主総会を開いて、代表取締役の賞与の承認を受けても、その費用は、日本では税法上の損金として計上ができません

費用とは会計上の経費のこと、一方、損金とは税務上の経費のことです。

会計上の経費である費用と会社が認めて、損益計算書に計上し、その分の営業利益を減らしても、必ずしも、その経費が、法人税務上、損金と認められて法人税が減るわけではないのです。

会社が期中に利益が出たからと言って、その期中に、社長にボーナスを出しても、費用とはなりますが、損金とはならないのです。

つまり、株主からは、
「よく頑張ったから、ボーナスを出してあげよう」
と認められても、
税務署では、
「そのボーナスを支払ったことにしないで、その分の法人税や法人住民税を課税します。」
と言われてしまうのです。

社長になるとボーナスがもらえないって本当?

このような損金否認を受けると、どうなるのでしょうか?

会社は、仮に100万円の賞与を代表取締役に支払し、費用計上します。

そうすると、その100万円は、損金否認され、法人税・法人地方税をあわせて、約35%分の税金を、支払わなければなりません。

つまり、会社は、社長に支払う賞与100万円のほかに、35万円の税金を余計にキャッシュアウトすることになります。会社からは、実際には135万円の現金がキャッシュアウトしてしまいます。この他、社長の報酬がアップすれば、社会保険の会社負担分である法定福利費も、更に多くなります。

このような費用として認められても、損金否認をされてしまう社長のボーナスは、会社にとって非常に「痛い」ため、多くの社長は、ボーナスを受け取らないのです。

なぜ、代表取締役の報酬アップは、損金計上が否認されるのか?

何故、税法上、代表取締役のボーナスなどの報酬アップは、法人税法上、損金性が否定されるのでしょうか?

それは、日本の代表取締役は、支配株主であるオーナーであることが多いため、会社の売上アップを利用して、自分で株主総会決議をして、お手盛りで自分に賞与を出し、利益操縦を行って、法人税を免れることができるからです。それを防止する趣旨の決まり事です。

実は、代表取締役の報酬というのは、賞与だけでなく、給与も、年度の途中で変更すると、損金に算入できないという、非常に使いにくいシステムになっているのです。

社長は、儲かったから臨時ボーナスを出すよ、と、従業員には言えますが、社長は、自分には儲かったからボーナスが、実務上は出せないのです。したがって、多くのオーナー社長は、会社が儲かった場合、ボーナスを自分に出す代わりに、会議費や、中小企業に認められる年間800万円の交際費の損金計用が認められる枠の中で、飲食費などで、自分に還元する方法を使っているのが、実務上の実態です。

注意しなければならないのは、売上が落ちて、自分の報酬を減額しても、減額がなかったとして法人税が課されるのが、社長の報酬だということです。ボーナスのような報酬の増額だけでなく、減額をすると、その差額分の損金参入ができません。

つまり、売上があがり、利益が出てしまうので、ボーナスを出してたり、期中で自分の報酬をアップしたりできないのと同時に、定時株主総会で大きく自分の定額報酬をあげ、期中で売り上げが大きく減額してしまっても、自分の報酬を減らして埋めることができないのです。

そのため、日本の会社の代表取締役は、期中の売り上げ減に備えて、自分の役員報酬を抑えめにする傾向が強いのです。これが、日本企業の社長の報酬が、アメリカ企業の社長の報酬に比べて、格段に低い理由なのです。

代表取締役の役員報酬を、損金計上する方法

では、代表取締役(取締役の従業員報酬部分を除く役員報酬部分も同様です)の報酬の増減分の費用を、法人税務上の損金として計上し、法人税や法人地方税を圧縮するためには、どのような方法をとる必要があるのでしょうか?

最も確実な方法は、期首から3か月以内に、増減させた取締役の報酬の振込みを開始することです。

取締役の報酬の決定は、株主総会の議決が必要です。

通常は、前期の決算書を承認する定時株主総会で役員報酬の決議をすることになります(取締役会設置会社の場合、株主総会で報酬額の総額を決議し、更に、取締役会で分配を決議します)。

従って、期首から2か月以内に株主総会の決議をし、その月の報酬分(通常、2か月目の報酬は一か月後に支払いますので)を3か月めで支払う手続きを踏めば確実です。そして、この定額報酬を1年間、維持することが必要です。

取締役役員報酬というのは、自由にしてしまうと、利益操縦を自由に自分の報酬を使ってできってしまうため、非常に堅苦しい歯止めが法人税法上、科せられています。

従って、中小企業の賢いオーナー経営者は、役員報酬の金額を控えめにし、その分を、別の形(例えば、交際費や出張手当など)で、受取る仕組みを採り入れるのです。

会社で利益が出た場合、オーナー社長は、従業員に臨時ボーナスを出して還元したり、従業員に福利還元したりするなどの損金に計上できる方法で、法人税を圧縮することが、経営上、求められるのです。

以上、ご参考になれば、幸いです。

続く

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