減価償却から、定率法が消える日

減価償却資産の定額法と定率法

企業の建物や備品など、減価償却の対象となる資産の場合、取得原価を取得年度の費用に一括で計上することはできません。減価償却の対象として、通常、税務当局が定める損金の償却期間にあわせて、減価償却の対象として、数年度にわたって費用(損金)計上をします。

その方法は、定額法と定率法がある、というのが、簿記を学んだことがある方であれば、どなたでも知っていると思います。

しかし、近時、建物本体部分の減価償却を定額法とすることが義務付けられ、備品に関しても、原則的に定額法によるものとされています。

定率法は、最近、非常に肩身が狭く、次第に会計の世界から消えさせられる運命にあるように見受けられます。

定額法とは、償却期間、定額で減価償却を行う方法です。これに対して、定率法は、償却期間、一定率で減価償却を行う方法です。

この両者の方法には、次のような差異があります。

・定率法は、定額法に比較して、早期に多くの費用(損金)計上ができる

・定額法は残存価額を設定し、その条件にそった形で取得原価から残存価額を減じたうえで、減価償却を行うのに対して、定率法は、そもそもその考え方に残存価額が最後に残ることが組み込まれていることから、残存価格という概念を用いない

消えつつある定率法を惜しむ

特に、税務当局からみると、定率法は、早期に損金計上が行われるため、早期に所得が圧縮されることから、定率法は、近年、税務当局に「嫌われている」ようです。

一方、企業側からみると、建物であれ、備品であれ、購入したときから時間が経過すれば、どんどん劣化していくわけですし、建物に至っては、長期の減価償却期間中に、修繕などの必要性が生じ、そこに費用がかかるわけですから、できる限り、定率法を使いたいわけです。

ただ、残念ながら、定率法は、次第に消えつつある運命にあるように思います。

企業の会計を預かる立場の経理や財務の責任者の目線からいえば、定率法がきえてゆくのは、「気の利いた娘が嫁にいってしまう」ような、とてもさみしい気持ちになるように思うわけです。

償却可能限度額や残存価額という概念も消えてゆく?

さて、定率法という「気の利いた娘」を企業から奪ってしまった税務当局も、残った定額法の人気が企業から落ちるのは避けたいようで、定額法に、一定の企業向けのサービスを施しています。

平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産については、減価償却の計算における「償却可能限度額」(取得原価の95%相当と定めていました)と、「残存価額」の規定がなくなりました。

これによって、定額法によれば、未償却残高が1円になるまで償却を認める、ということになったわけです。

それまでは、償却資産については、定率法によっても、定額法によっても、取得原価の5%程度は最後まで損金計上を認めなかったわけです。これが、平成19年以降の取得した減価償却資産は、定額法によれば、先々に、全額損金計上を認めましょう、と、こう、定額法利用企業に、リップサービスを導入しました。

早い時期の償却は、定率法の適用を絞ることで認めないけれど、そのかわりに、償却期間の最後には、定率法ではできない、取得原価全額の損金計上を認めてあげましょう、という税務当局の温情が示されたわけです。

気の利いた娘は嫁にいってしまったけれど、残った気の利かない娘に、ちょっと綺麗な着物を国がプレゼントしてくれたようなものでしょうか(笑)。

企業の経理や財務担当者とすると、今後は定率法を使うことができず、減価償却資産の早期の損金計上はしにくくなることは事実です。

一方、企業の経営環境は、ますます先が読めなくなっています。

今の優良企業であっても、数年後の黒字なんて読み切れない不透明化が増す中においては、取得した資産を黒字ができている早い段階のうちに、できる限り多く償却したいのが本音ですよね。

そう考える一方で、定率法が「嫁に行ってしまう」と、企業にとって、建物や、額の大きな生産財の備品の購入がしにくいご時世になっていっているということでしょう。

フォーワードが取り扱わせていただいている、金額の大きなオフィス家具の購入などは、これまでは現金で購入することで、定率法を利用して、リースで費用化するよりも早期に損金計上できたわけですが、今後、備品についても、これができなくなる時代が、来るかもしれませんね。

比較的、大きな備品の現金購入を検討されている企業様は、定率法が使えるうちに、是非、フォーワードへご用命ください。

減価償却資産の塊のような製造業から、減価償却資産を持たないサービス業やIT業へ時代が流れていくのも、こうした会計上のルール変更も一因かもしれませんね。

以上、参考にしていただければ幸いです。

続く

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