名板貸し(ないたがし)と、フランチャイズ本部

商法及び会社法では、名板貸し人(ないたがしにん)に強い責任が規定されています

商法からお引越しのような形で、会社法が成立したのは、平成17年です。それまでの商法の会社関連の規定の仕方を大きく改め、会社法では、株式会社を中心に条文が構成されました。

商法時代に比べ、会社法は、非常にわかりやすくなりました。ところが、会社法の時代にも、明治時代に成立した商法の概念がそのまま維持された制度もあります。

例えば、「名板貸し人」の責任です。

企業法がグローバルな展開を想定して、発展する現代に、この古めかしい名前が会社法の時代にも維持されました。

会社法9条

自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

「自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社」が、名板貸し人です。

名板貸し人は、名板貸しをされた会社が、他人と取引をし、その他人がその取引先を名板貸し人の会社と誤認したときは、連帯債務を負う責任が発生してしまう、と言っているのが、会社法9条です。

この誤認した相手方に誤認について過失があったとしても、それが重過失(故意と同視できるほどの過失)でない限り、相手方は保護されるという最高裁判所の判例があります。従って、民法の権利外観法理のあらわれでもある表見代理人の責任(民法109条、110条、112条)よりも、軽過失者が保護されるため、取引安全(動的安全)の保護を重視した、企業法ならではの重い責任になっているのが、会社法9条の名板貸し人の責任です。

会社法9条は、名前を使わせたら、それだけで、相手方に誤認について軽過失があっても、連帯債務が発生してしまうという、なかなか、凄味がある規定です。

商法総則には、会社法の総則と重なった規定があります(商法14条)。この規定は、旧商法23条に規定されていました。このように、名板貸し人の責任は、会社に適用される会社法9条と、会社以外の商人に適用される商法14条が重ねて規定されています。従って、名板貸し人の責任は、大企業だけの話ではなく、中小企業、ひいては、個人事業主にすら、適用されてしまう規定なのです。

名板貸し人の責任と、フランチャイズ

「名板貸し人」などと、非常に古めかしい用語を使用した概念でありながら、この名板貸し人の責任の規定は、企業の現実の業務の中で、とても注意を要する重要な規定です。特に、営業部門や新規事業部門が、前のめりになることに対して、コンプライアンス上の注意を喚起する役割の法務部門や、総務部門にとって、この名板貸し人の責任の知識と、守備領域を理解することは、とても重要です。

何故かと言いますと、ライセンス契約、そしてフランチャイズ、更に代理店や取次店など、「自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社」ということの周辺領域が、現代のビジネスの現場でもたくさんあるからです。

一つ、契約の仕方や運用の仕方を間違えますと、ライセンサーやフランチャイザーに名板貸し人の責任が、かかってきてしまう可能性があるわけです。

これらの名板貸し人の周辺領域のビジネスを扱う企業の経営者・法務部門や総務部門は、相手方との関係が、名板貸し人に該当しないかどうか、確認をする必要があります。特に、注意を要するのが、フランチャイズシステムです(ライセンス契約の場合も同様です)。

フランチャイズは、フランチャイズ本部(以下、「フランチャイザー」と呼びます。)が、フランチャイズ加盟店(以下、「フランチャージー」と呼びます。)に、その商標の使用権を認める契約を含む場合が殆どだからです。

どういう場合に、フランチャイザーの名板貸し人の責任が発生してしまうか?

では、名板貸し人の責任を規定する会社法9条・商法14条を前提に、フランチャイズ本部を展開する場合などで、どのような配慮をすべきでしょうか?

これは、商標の設定の仕方に関わってきます。

一番、結論から申し上げますと、一番やってはならないことは、会社名をそのまま商標として展開し、それをフランチャイジーやライセンシーに利用させることです。

商標やブランド名と、会社名や屋号は分けておきましょう

例えば、フランチャイズ契約が、成長戦略として頻繁に行われる飲食業を展開する企業の多くは、会社名と商標を分けています。

著名な企業様の例でみてみましょう。

例えば、「丸亀製麺」の商標を展開するのは、株式会社トリドールホールディングスです。

「スシロー」の商標を展開するのは、株式会社あきんどスシローです。

「すかいらーく」の商標を展開するのは、株式会社すかいらーくホールディングスです。

トリドールのように、全く会社名と異なる商標を展開する企業もありますが、すかいらーくや、スシローのように、会社名の一部が商標になっている場合でも、「株式会社スシロー」や、「株式会社すかいらーく」とは、していません。

これは、将来、自社のビジネスモデルが、フランチャイザーや、商標を他社に利用させるライセンスビジネスなどに進む場合、その他社の債務に対する名板貸し人の責任を問われないための予防的な配慮です。

一方で、このような配慮をせずに、会社名を商品名や商標名そのままにして会社名を決めて登記をしてしまう中小企業や、店の名前をそこまま屋号する個人事業主が、時々おられます。

このような会社の場合、名板貸し人の責任のリスクが発生するため、フランチャイザーや、ライセンスサービジネスへの道が閉ざされてしまいます。

仮に、会社が成長したのちに、そのような会社が、これらのビジネスへ進む場合、会社名を変更することを、その時点で検討しなければならなくなります。

従って、商品などのブランド名や、商標と、会社名は必ず別に命名する、というビジネスの基本ルールを知っておくとよいですね。

以上、参考になれば幸いです。

続く

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