19歳以下では、女性の自殺者数が男性を上回る状況が続く
警察庁の自殺統計をもとに厚生労働省が公表している資料によると、2024年の19歳以下の自殺者数は、女性430人、男性370人となり、女性が男性を上回りました。
2014年には、同年代の自殺者数は女性165人、男性373人でした。それから10年後の2024年には男女の構成が逆転したことになります。
さらに、2025年の確定値でも、19歳以下の自殺者数は女性429人、男性401人となり、女性が男性を上回る状況が続いています。
もちろん、自殺にはさまざまな要因が複合的に関係しており、この数字だけから「若い女性全体のこころの健康が悪化している」と単純に結論づけることはできません。
また、全年齢の自殺者数では、現在も男性が女性を大きく上回っています。
ここで注目したいのは、あくまで19歳以下という若い世代において、従来とは異なる変化が生じているという点です。
この変化は、学校や家庭だけの問題ではありません。これから若い世代を新卒社員として迎える企業にとっても、従業員のメンタルヘルスや職場のストレス対策を考えるうえで、無関係ではないと私たちは考えています。
何故、いま、若い女性のこころの健康が注目されているのか?
若い世代のメンタルヘルスに影響を与える要因を、一つだけに特定することはできません。
しかし、国内外の調査や研究からは、いくつかの要因について注意する必要があることが示されています。
第一に、学業や将来に対する心理的なプレッシャーです。
WHO欧州地域事務局が欧州・中央アジア・カナダの44か国・地域で実施した大規模調査では、学校生活から受けるプレッシャーが増加しており、特に思春期の女子でその傾向が強くみられることが報告されています。加えて、家族や周囲から十分な支援を得ていると感じる若者の割合が低下していることも指摘されています。
第二に、インターネットやSNSとの関わりです。
SNSそのものが、若者のこころの健康を悪化させると単純に考えるべきではありません。SNSには、人とのつながりを生み、必要な情報や支援にアクセスできるという大きな利点もあります。
一方で、WHOの調査では、自分で利用時間をコントロールできないなどの「問題のあるSNS利用」が若者の間で増加しており、女子の割合が男子より高いという結果も報告されています。
睡眠不足、他者との過度な比較、誹謗中傷、オンライン上の人間関係などが重なれば、心理的負担を大きくする可能性があります。
第三に、ハラスメントや暴力、人間関係上のストレスです。
若者のメンタルヘルスを考える際には、学校だけでなく、その後に働くことになる企業においても、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを含む職場環境上の問題を軽視することはできません。厚生労働省の令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間にセクシュアルハラスメントを一度以上経験した割合は、女性8.9%、男性3.9%と報告されています。
一方で、ハラスメントは性別を問わず起こり得ます。企業には、特定の性別だけを対象にするのではなく、すべての従業員が安心して働ける環境を整えながら、それぞれが抱えるリスクや事情にも配慮する姿勢が求められます。
企業の総務・人事部門でも、メンタルヘルス対策は重要な経営課題
19歳以下の自殺統計を、そのまま企業で働く女性社員の状況に当てはめることはできません。
しかし、若い世代の心理的負担が社会的な課題となっている以上、これから若手社員を採用し、育成していく企業の総務・人事部門にとって、無視できない変化であることも事実です。
企業に求められるのは、「女性だから特別にケアをする」という考え方ではありません。年齢、性別、家庭環境、職務内容などによって異なるストレス要因を把握し、一人ひとりが安心して働き続けられる職場環境を整備することです。
ストレスチェックや産業医との連携、相談窓口の整備、ハラスメント防止策、適切な労働時間管理などは、もちろん重要です。そのうえで、総務部門として検討したいのが、日々長い時間を過ごす「オフィスそのもの」の環境です。
周囲の音、照明、温熱環境、座席配置、休憩スペース、コミュニケーションの取りやすさ、集中できる場所とリフレッシュできる場所の使い分けなど、働く空間には従業員の心理的・身体的な負担に関係するさまざまな要素があります。
オフィス環境だけですべてのメンタルヘルス上の問題を解決できるわけではありません。しかし、従業員が働いている時間の多くを過ごす場所だからこそ、ストレスを必要以上に蓄積させない職場環境をつくることは、企業が取り組むことのできる重要な施策の一つではないでしょうか。
従業員のメンタルヘルス対策は、福利厚生だけの問題ではありません。健康経営、人材定着、エンゲージメント、生産性、採用競争力といった企業経営にも関係する課題として、総務・人事部門が継続的に取り組む必要があると、私たちは考えています。
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