オフィスの環境を考える

オフィス環境の改善は、仕事の効率性の向上ではなく、オフィスの人間関係が構築しやすいことを重視して

経営学を学ぶ方が、必ず読む事例に、アメリカのボストンコンサルティンググループが行った「ホーソン実験」があります。

この壮大な実験の成果は、経営学の専門書の中では、必ず、「人間関係論」の箇所でとりあげられています。しかし、実は、ボストンコンサルティンググループが、ホーソン工場という巨大な工場を舞台に、数年間にわたって行った経営学上の壮大な実験の、当初の目的は、「環境が仕事の生産性や効率に与える影響」の調査でした。

ボストンコンサルティンググループは、その本拠地の、ハーバード大学のお膝元である、マサチューセッツ州の州都 ボストンから、優秀なコンサルタントを、大量にホーソン工場に送り込み、そこで、働く人たちに対して、様々な実験を行ったのです。

電気を明るくしてみたり、暗くしてみたり。
机の高さを変えてみたり。
椅子の座り心地を変えてみたり。

しかし、このような些細な環境の変更を行ってみても、工場での作業効率は、部分的にはまったく上がりませんでした。

ボストンコンサルティンググループのコンサルタントたちは、アタマを抱え込みます。

膨大な予算を投入して、いくら工場の環境の変更を行っても、その各変更部分に対する生産効率の向上は、ほとんど見られなかったのです。

しかし、実験が終盤に差し掛かったとき、工場全体の生産数値を見た、幹部コンサルタントは、目を見張ります。

部分的な環境変更に対する生産性の向上は、まったく見られなかったにも関わらず、工場全体の生産量、つまり生産性が劇的に上がっていたのです。

部分的な生産効率があがらないのに、何故、生産性があがったのか?

ボストンコンサルティンググループは、その原因を確かめるため、ホーソン工場の従業員にインタビューを行いました。

その結果は、当時としては、驚くべきものだったのです。

ホーソン工場は、アメリカの田舎の工場です。

そこに、東海岸のボストンから、名門ビジネススクールを出たMBAホルダーの経営コンサルタントたちが、大挙して現地にやってきて、自分たちの仕事の効率を高めようと、一生懸命、工員たちに語り掛けながら環境を変えてくれていた・・・。

こんなこと、アメリカの片田舎の工場の工員たちは、初めての経験だったのです。

それまでは、会社から、ノルマ・ノルマと言われ、ベルトコンベア-のところに座って、一日中、同じ作業を繰りかえさせられ、失敗すれば、賃金を減らされていました。

これが、古典的経営管理論といわれる、フォードなどが編み出した管理法でした。

その中では、人間疎外が起きてしまっていたのです。

彼らにとって、工場の照明の明るさや、椅子の硬さなどの改善ではなく、多くの優秀なコンサルタントが、自分の隣にきて、自分の仕事を一生懸命観察し、いかにしたら、効率があがるかを、一緒に考えてくれたこと、そこに、非常に高い生産性向上の鍵があったのです。

このボストンコンサルティンググループの実験は、オフィス環境は、ほとんど、生産効率に影響を与えないが、人間関係こそ、最も重要な要素であるということを明らかにしました。

ここから、経営学における人間関係論がスタートしたのです。

要は、こういうことです。

ヒトは、確かに、どのような環境でも仕事ができます。丸の内の高層ビルの中のオフィスでも、自宅でも、生産性は殆ど変わらないのです。

しかし、大切なことは、人間関係です。人間関係を向上させられるような、オフィス環境を造ることで、生産性はあがる、ということです。

椅子の硬さや、電気の明るさを変えるようなことでは、生産効率はあがらないけれども、人間関係が円滑になり、他人が自分の仕事を認めてくれるようなコミュニケーションができるオフィス環境にかえれば、確実に生産性があがる、ということを、ホーソン実験は示しているのです。

テレワークだけで仕事ができるという意見の盲点と、人間関係論

新型コロナ禍が進んだ中で、テレワークが普及しました。

テレワークは、アフターコロナ禍においても、重要な仕事のツールであり続け、オフィスに出勤すること、イコール、仕事という時代には、もう戻らないことは間違いないでしょう。

テレワークを単にコロナ禍の便宜とだけ解して、ウイルスがなくなれば、また、元のオフィスに、全員を以前のように出社させると考える企業は、おそらく、従業員の支持を受けることができず、ヒト離れと生産性の低下を招くでしょう。

しかし、一方で、テレワークだけで、仕事がすべて完結する、という考え方もまた、長期的には、生産性の低下を招くことを、ホーソン実験は示しています。

もし、ホーソン実験時代に、テレワークがあり、ホーソン工場に対して、ボストンから、遠隔で、東海岸のエリートコンサルタントたちが、工員たちに、ああせい、こうせいとテレワークで指示してホーソン実験を遂行していれば、ホーソン実験は、世紀の大失敗実験に終わったはずだからです。

人間関係論は、仕事の生産性にとって、人間の心というものが、非常に重要な機能を果たしていることを示唆しています。

エンターテイメントの世界でいえば、AKB48が、モーニング娘。にとって代わり、ブレークしたのは、AKB48が、AKB劇場というリアルな場にいけば、ファンが遭える、そして、センターという目標を目指して、全員がそれぞれ、泣いたり笑ったりしながら、懸命に努力をしている姿に対して、圧倒的な「推し」行動を引き起こしたからに他なりません。

リアルな人間関係がなくても、たった一人でモチベーションを維持し続けられるほど、人間は、強い生き物ではないことを、ホーソン実験は、示しています。

リアルな人間関係を大切にできる環境を、オフィスに造る

今、オフィスをフリーアドレス化し、多様なワークプレイスを導入する企業が増えています。集中する業務や、コミュニケーションを重視する業務、人間関係の向上など、仕事の中の様々な要素を、そのシーンごとに最適に実行できるように設計された、非常に優れた試みです。

従来の島形の机の配置のオフィスは、上司が部下を管理し、指揮命令をするためのカタチです。
フリ-アドレスは、これを崩しました。

そこには、人間関係論が示唆する工夫がたくさん盛り込まれています。

このような環境のオフィスは、確実に、生産性を向上させ、その結果、オフィスに投資した資金を利益として回収できるのではないでしょうか。

絵画や、植物などの配置の工夫

ただ、フリーアドレスのオフィスに、変更するという工事は、予算的に大きな支出を伴うのも事実です。

そこまでは難しいという場合でも、小さな予算で、色々な工夫もできます。

例えば、殺風景なオフィスに植物を配置したり、あるいは、絵画をかけたりするだけでも、それを種にした会話が生まれ、人間関係の促進に役立つでしょう。

フォーワードでは、植物のレンタルサービスや、絵画のレンタルサービスの導入もお手伝いしております。

小さいことから、人間関係の促進を図ることも、人間関係が希薄化し、生産性が長期的に低迷する可能性があるテレワーク時代の、リアルオフィス政策には、大切な変更なのではないでしょうか?

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以上、参考にしていただければ幸いです。

続く

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