トイレは、ある日、突然、ボコボコ鳴り出します
「いや、自分には、そんな経験はないんだけど・・・」
このコラムの題名を読んで、そう思った方は、まだ、その不運に見舞われたことがない方なのです。
一方で、「あるある!」と、不気味な現象を想いだした方も、かなりたくさん、おられると思います。
少し築年数が経過したオフィスビルや、自宅(少し築年数が経過した一戸建てやマンション)に、オフィスやお住まいがある方は、これからご経験になる方が増えてくると思います。
この現象は、次のようなものです。
夏に台風が来たり、大雨がふったりしている時。
トイレを使おうと洋式のトイレに入ったら、そのトイレの下から、ボコッ!ボコッ!と、不気味な音がしはじめるのです。
その音たるや、非常に不気味。
「もしかして、トイレをこのまま使って、流したら、一気に逆流してくるのでは・・・」
と思わせる、嫌な感じの音です。
この不気味な音を聞いて、会社であれば、社員の方が、総務部門に飛んできて、総務の方が慌てて、管理会社に電話をする・・・という、事態に繋がります。
そして、逆流を恐れる、その予感は、この状態で無理をしてトイレを使用すると、本当に的中してしまいます。それどころか、この音がしはじめると、使用をしなくても、逆流が始まることがあるのです。
トイレで、下水から逆流をすると、汚水が、便器から溢れて、洪水になってしまいます。それが下水であるわけですから、これが、どれほど悲惨な一大事になることは想像するだけでも、大変な事態です。
このコラムは、近年増加し、今後、更に増えるであろう、このトイレのボコボコ現象が起きたときの、緊急対処法を発信するコンテンツです。
トイレのボコボコ現象の正体
このトイレのボコボコ現象は、主に、夏から秋にかけて発生することが増えています。
地球の異常気象が進行し、今、世界では、激甚災害が増え続けています。日本でも、超・大型台風の襲来や、ゲリラ豪雨が増えています。
これを原因とする集中的な豪雨によって、大量の水が、過去の建築基準、とりわけ下水道の排水基準を大幅に上回る水量で、雨水として都市の地下にある下水道に流れ込みます。
実は、下水道の管には、二つの種類があります。
雨水を流す雨水管と、汚水を流す汚水管です。
皆さんも、道路脇に造られた雨水管に、雨が降ったときに、雨水が流れ込んでいるのを見たことがあるでしょう。その水は、オフィスや家庭で排出された汚水とは別の管を通って、排水されていると、多くの人は思っています。
しかし、この排水の仕方に、日本では2通りの方法があるのです。
汚水管と雨水管を、それぞれ別の排水管で流す方法
●合流式
汚水管と雨水管を、ある地点で合流させ、排水をする方法
考えていただくとわかると思いますが、分流式よりも合流式のほうが、建設コストは安くて済みます。日本は、非常に衛生的に敏感な国柄であるため、下水道というのは、世界の中でも、比較的、早くから整備されました。特に、東京など、太平洋戦争で空襲を受けた街では、復興段階で、汲み取り式を作らず、水洗式のトイレを整備していった経緯があります。
しかし、早くから下水道の整備が進み、水洗式が導入されたという点が、実は、問題だったのです。
戦後復興当時は、まだ公共投資に対して予算が多くありませんでした。そのため、1970年代まで、下水を分流式ではなく、合流式で作っていたエリアが東京では特に非常に多かったのです。
当然、当時の合流式でも、汚水量と雨水量を計算し、排水できる基準で建築されました。
しかしながら、それは当時の想定に基づく計算でした。異常気象が進行し、ゲリラ豪雨が局地的に襲ってきたり、当時は想定していなかった超大型台風が襲来することの水量までは、計算に入れられていませんでした。
そのため、合流式の配管がどこかで採用されていると、雨水が想定をはるかに上回る量に達してしまい、汚水が流れなくなってしまいます。それでも、オフィスビルやマンションでは、構わずに、汚水を汚水管に流し続けるわけですから、それが、どこかの時点で、逆流となって流れます。
その前触れが、この、トイレのボコボコ現象なのです。
勿論、これは、その場所で雨が降っていなくても起きます。合流地点でゲリア豪雨が、集中的に発生した場合、それとはかなり離れた地点で、逆流が起きる可能性があるのです。
トイレの排水というのは、固形物を流すことを想定しているため、トラップ(排水で降り曲がった部分)を作りません。自然勾配で汚水管に、直接、繋げています。そのため、汚水管の中で、強い圧力で逆流が起きると、台所や洗面所などよりも、逆流が起きやすいという特徴があります。
トイレのボコボコから、逆流を阻止する、とても簡単な方法
では、このような、トイレのボコボコ現象がはじまってしまったときに、どうしたら、逆流を防ぐことができるのでしょうか?
実は、知ってさえいれば、慌てずに簡単に逆流を防ぐ方法があります。ここでは、その方法を伝授いたします。
結論から言いますと、「水嚢」を簡易に作るという方法です。
簡単な水嚢のつくり方と逆流防止法
① まず、スーパーの買い物で貰う(今は、買うようになっています)ビニール袋の大きめのものを1枚準備します
② この袋に、水をいっぱいに入れ、それをしっかり封をします。
これで出来上がった、水を充満したビニール袋が簡易な水嚢です。
③ あとは、この水嚢を、水栓トイレに入れます。
④ そして、「しばらくの間、使用禁止」の張り紙を出します
これで、OKです。
合流式の配管で、雨水が想定をはるかに上回ったとしても、その豪雨がされば、比較的スムースに、合流式の配管の排水は、平常に戻ります。しばらくしますと、もう、ボコボコ音は、ならなくなります。
水嚢の作り方は、簡単です。
スーパーのビニール袋の大きいサイズのものに水を充満させますと、その重さは、約10kgになり、排水の逆流の力は、10kgの重りを押し上げることはできないので、この簡易な水嚢で、充分、下水の逆流の心配はなくなるのです。
水嚢のイメージは、こんな感じです。
準備しておくものは、スーパーのビニール袋大を、トイレの数だけです。
おカネもかかりませんので、是非、万が一の時のために、オフィスでも便器の数だけ準備をしておいてください。
以上、参考にしていただければ幸いです。
続く