アフターコロナに向けて、ヒトが大きく動き出しています
コロナ禍においては、賢明な経営者は、アフターコロナ後の成長戦略を維持するため、雇用を守り抜くことに大きな努力を払いました。
しかし、一方で、コロナ禍の直撃を受けた産業では、やむなく、従業員の退職を促さざるをえなかった企業もありました。
このような企業も、2022年からスタートするアフターコロナでは、ヒトを再雇用することが不可欠になってきます。特に、打撃が大きかった飲食業や旅行業では、このような採用の機運は今後、あがってくると思われます。
事実、飲食業では、2021年10月の緊急事態宣言の終結に伴う協力金の振込みが2021年12月には終わる中、年末商戦である12月に再起をかけた勝負をしなければならなかったところ、人が採用できずに、店を開店できなかった企業が非常に多く発生しました。
採用問題で、閉店を継続せざるをえない店が、2022年にも増えるものと予想できます。
それ以外の企業においても、テレワークの維持をはじめとする雇用上の論点で、従業員と経営側の考え方の相違などが発生し、雇用が流動化する事態が起きている企業も増えています。
アフターコロナで、ヒトの流動化が始まっています。
求人市場の中の、転職者の声
エン・ジャパン株式会社が実施した、最新の転職理由の調査によりますと、転職者のうち、20代から40代を通して、「コロナの影響で休業・解雇にあったため」と回答している人が、転職者の23%に達しています。そして、「コロナの影響で会社の経営が苦しく、将来性を感じられないから」と答えた人は、全体の32%にのぼっています。
つまり、現在の転職市場に出ている人の過半数は、コロナ禍の影響を受けて転職していることがわかります。
一方で、残業代減少を主な理由とする「給与全体が下がったから」とした方が、全体の33%にも上っています。
この人たちは、「コロナの影響で休業・解雇にあったため」「コロナの影響で会社の経営が苦しく、将来性を感じられないから」と回答した人とは異質の転職理由と考えねばなりません。
コロナ前に、残業代を事実上、自分の給与として読み込んで、残業などの長時間労働頼みで生活をしていた人です。成果型の報酬に移行できていなかった日本の雇用環境の問題点が、テレワークなどの導入の中であぶり出され、転職をした人であることが伺える回答です。このような層も転職者の3分の1いることも、今の特徴です。
アフターコロナで、企業の求人を行う上での注意点
アフターコロナでは、各企業ともに業績の回復を見込んで、求人を積極的に行うものと思います。
この時に注意をしたほうがよいのは、上記の「残業代減少で給与が下がったことを理由とする転職者層」ではないでしょうか。
アフターコロナは、コロナ前に時代が戻るわけではありません。
多くの企業は、業績回復を目指しながらも、オフィスや固定人件費の増大には、注意をするものと思います。
テレワークの持続を行い、自分のチカラで自立して生産性を高めることができる人材を選りすぐって採用をする企業が増えるでしょう。企業の人事評価についても、オフィスでの長時間労働をよしとするような評価には、二度と企業は戻らないでしょう。
そのとき、残業代減少で給与が下がったことを理由とする転職者層は、今後、高い生産性を目指す企業の働き方に適合するとは思えません。
このような転職層が、相当数、転職マーケットに出ていることを念頭におきながら、充分な選抜を行うことが、人事採用には求められるのではないでしょうか。
自分の価値を、オフィスで長時間働くことに置く、あるいは、若い社員に生産性ではなく、オフィスに長時間勤務することをよしとするような風潮に会社が戻ってしまえば、アフターコロナ時代においては、非常に危険ではないかと思うわけです。
以上、参考にしていただければ幸いです。
続く