出社制か、在宅勤務制か、ハイブリッドか
アフターコロナ、ウイズコロナの時代の中で、各企業は、社員の業務体制の在り方を模索しています。
在宅勤務制か、出社制か、あるいは、その双方の混合形態を認めるハイブリッド制か、という体制の問題は、コロナ感染予防という観点から、いかなる体制が生産性や効率性をあげることができるか、という組織管理の模索の観点の解決課題に移行しています。
社員の中からは、完全な在宅勤務制やハイブリッドを求める声がある一方、マネジメントの観点から、出社制を求める管理職の声もあります。
企業内の仕事内容によっても、業務体制の在り方での生産性や効率性に違いが出てくると考え、また就業規則や労働協約による制約もあります。
100%納得がいく答えが出しにくい中で、他の企業の状況や、人材採用のしやすさの観点も含めて、各企業がいまだ、模索の中にあるというのが、業務体制の問題ではないでしょうか。
Amazonが、週5勤務・2つの本社で固定座席制へ移行
そのような中で、2024年9月、世界の企業経営者を驚かすニュースが流れました。
米国GAFAの一社、Amazonが、世界の社員に原則週5出社を求め、2025年1月から完全実施を適用させると発表したのです。
Amazonのアンディ・ジャシーCEOが、従業員宛てのメモでこれを呼びかけました。
報道されている内容では、
「過去5年を振り返り、オフィスで一緒に働くことの利点は大きいと確信している。」
と、CEOは呼びかけたとのことです。
CEOは、社員同士が学びあい、新たなアイデアを生み出したりするには、在宅勤務ではなく、出社制が効率的だと説明されています。
この結果、Amazonの、世界153万人の社員が、2025年1月から原則出社制となり、在宅勤務はなくなる体制になるようです。
また、米西部ワシントン州シアトルと米東部バージニア州アーリントンにある2つの本社で、フリーアドレス制を廃止し、固定座席制に戻すことも公表しました。
企業が模索する 最も効率的な働き方は、どのような形態なのか?
このAmazonの方針は、おそらく、今後、最も在宅勤務制を採用しやすい業界である、IT業界に大きな影響があるでしょう。
Amazonは、巨大な流通産業で現場職の方が多いとはいえ、オフィス勤務の社員を含むすべての社員を出勤制にした理由が、生産性向上と創造力の向上にあるからです。
日本の経済界では、最も効率的な働き方は、ハイブリッド型だと考えられています。しかし、これは、おそらく、技術職や単純事務職を想定した考え方ではないかと思われます。
Amazonは、非常にイノベーションを重視する企業であり、だからこそ、いまの規模まで会社を成長させることができたのです。イノベーションを仕事としかければならない、企画職やマネジメント職が、長期で在宅勤務制をとれば、社会から意識的に孤立してしまい、イノベーションの力は、確実に落ちるはずです。
イノベーショには、社員同士の学びあいや、現場に現れる課題に対する意識、そして、会社外の環境から受け取る情報が不可欠だからです。
Amazonが危惧したことは、これ以上、在宅勤務制やハイブリッド制を維持すれば、社員が直近の仕事をこなすことに集中してしまい、Amazonをここまで成長させたイノベーションの力を、大きく損なうと認識したからではないでしょうか。
社員の「自立」のレベルや、役割によって、業務内容で、効率的な働き方は変わる
会社の体制で、何が最も効率的かつ生産的であるかは、ヒトそれぞれによって変わります。
一定のルーティン業務をこなすことを求められる職種で、かつ、その業務の熟練度がすでに高く、自立して仕事をこなす自己管理能力を持つヒトは、おそらく、在宅勤務制が最も効率的な体制ではないかと思います。
一方、組織のイノベーションを推進する立場のマネジメントや企画職で、現場や外部環境から情報を受け続ける立場にあるヒトは、出社制でなければ、その能力は中長期で衰えてしまい、企業の未来に大きな損失を来してしまうでしょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
続く