就業規則と労働協約は、どちらが優先するの?

労働契約と、就業規則・労働協約の関係

ヒトの雇用を行う場合、原則として雇用契約書を締結します。

甲株式会社と、Aさんとの雇用契約書に、「時給1200円」と契約をされていたとしましょう。一方、甲株式会社の就業規則に、「時給1500円」と記載がされていたとします。

この場合、Aさんの雇用条件は、就業規則の最低基準としての効力によって、時給1500円が条件となります。

一方、甲株式会社の就業規則に、「時給1100円」と規定されていた場合、Aさんの時給は、1100円には下がりません。契約書の1200円が適用されます。

就業規則とは、このように、労働条件の最低基準を規定する効力があり、就業規則よりも労働者にとって不利な条件が契約されていても、就業規則の規定レベルが最低限の条件となります。

では、甲株式会社にB労働組合があり、Aさんはその組合員だったとしましょう。
この時、甲株式会社とB労働組合との間で締結されるのが、労働協約です。

さて、この労働協約と、就業規則は、どう違うのでしょうか?

甲株式会社と、Aさんとの雇用契約書に、「時給1200円」と契約をされていたとしましょう。一方、甲株式会社とB労働組合の労働協約に、「時給1500円」と記載がされていたとします。

この場合、就業規則と同様、Aさんの雇用条件は、時給1500円が条件となります

しかし、甲株式会社とB労働組合の労働協約に、「時給1100円」と規定されていた場合、Aさんの時給は、1100円には下がります。契約書に1200円と規定されていても、労働協約が優先してしまいます。

これが、労働協約の有利性の原則です。

これ、人事を担当する方が、絶対、知らなければならない法律知識です。間違えると、大変なことになりますから、気を付けましょう。

就業規則と、労働協約は、その法的な効力が違うのです。

就業規則と、労働協約が、異なる定めをした場合

では、就業規則に「時給1200円」と定められている会社が、労使交渉の末に労働協約で、「時給1100円」と定めた場合、どのようになるでしょうか?

この場合、その労働協約を締結した労働組合に加入する労働者の時給は、1100円となります。加入していない労働者の時給は、就業規則が適用されて1200円のまま、ということで、何とも、不合理な話になってしまいます。

ちなみに、労働協約とは別に、従業員の過半数の労働者が加入する労働組合が使用者と締結した協定を、労使協定と呼びます。

この労使協定の中で、最も重要な協定が36(サブロク)協定です。

36協定は、残業時間に関する協定で、この36協定を締結せずに、従業員に残業をさせてしまうと、経営者は違法となり、刑事罰も科せられます。時間から時間で残業のないアルバイト以外の、正社員や契約社員を雇用している場合、残業は不可避ですから、36協定の締結と届け出は、会社にとって必須になります。

この労使協定が、労働協約と異なる点は、当該労働組合に加入していない従業員も、労使協定が締結されると、拘束されるという点です。

ちなみに、労働者の過半数を超える労働者が加入する労働組合がない場合、過半数の労働者を代表する社員と、使用者は労使協定を締結することができます。

これが締結されると、全従業員が拘束されてしまいますので、この代表者は責任重大ということになります。

従って、この代表者を定める基準については、最高裁判所は、なかなか厳しい判断基準を設定しています。

例えば、労働組合ではなく、全従業員の慰安団体の幹部を労使協定の代表者とした場合(つまり、「宴会部長」のような役回りの方を想像してください)、代表者としては不適切との判断を最高裁は示しています。

36協定を、会社側の都合のいいヒトを選んで、安易に労使協定を結ぶと、あとで、その効力を従業員に争われ、大変な残業に対する支出を強いられる可能性があるわけです。更に、最悪の場合、経営者に刑事罰が科せられます。

労働法の世界は、民事法ですが、その経営者による違反には、刑事罰がありますから、充分、注意が必要です。

以上、参考にしてください。

続く

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