商品の輸出をするとき、書類は、全部英語で、しかも専門用語が盛りだくさん
ひと昔前まで、商品を海外に輸出する、という場合、総合商社のお世話になる、という方法が一般的でした。
しかし、それは、かなりの中間コストを要するため、よほどの価格競争力がある商品か、大量な輸出をするのでない限り、採算にあわなくなりました。
今は、価格が非常に重要な時代。総合商社の中間マージンをかけていたのでは、価格競争力が伴いません。
そこで、今は、企業が海外で商品を売りたい、海外の企業に商品を送りたいという場合、生産者が、自前で、輸出を検討する場合が多くなってきました。
ただ、商品見本を、国際宅配で、一回だけ送る、という場合を超えて、商品を輸出するとなりますと、貿易という専門的な分野の知識が必要になってきます。
営業部門が商品を海外に出すことになり、そのための契約書や輸出関連の書類を総務部門や業務部門が作らなければならなくなる、ということが、突然、発生する企業が多くなっています。
この貿易という分野は、何分、相手は海外の企業や代理店ですから、その書類は、原則として、すべて英語です。しかも、その英語は、高校や大学で勉強してきた英語とは、かなり異なり、特殊です。
そして、貿易専門の用語が、大量に使われていて、貿易英語をきちんと勉強しないと、歯が立ちません。
そして、その中で、最も重要で、知らないと、貿易が成り立たないのが、インコタームズです。
今回は、このインコタームズの世界を、覗いてみましょう。
インコタームズとは?
インコタームズは、国際商業会議所(ICC)が貿易規則の解釈に関する国際規則として制定した解釈基準です。
インコタームズは、法律や国際条約ではありませんが、ほぼ、すべての貿易上の契約書に明示されており、この意味がわからないと、貿易のコストが計算できません。
以下、代表的なインコタームズをあげて、インコタームズの世界を覗いてみましょう。
まず、インコタームズを理解するため、必須なことがあります。
- 輸送の費用負担の範囲
- 輸送の危険負担の範囲
の分担に関する取り決めです
まず、このことをしっかりアタマにいれる必要があります。
そのうえで、インコタームズの代表的な例をみてしましょう。
1、EXW
Ex Worksの略です。
EXWは、日本語では、工場渡しと訳されます。
つまり、輸出側の指定場所(生産工場など)で、輸入側が引き取り、その後の費用と危険負担をすべて輸入側がおうという条件が、EXWです。
つまり、輸出側は、自分の工場で、ただ、商品を引き渡すだけ、ということです。
2、DDP
Deliver Duty Paidの略です。
これは、EXWの正反対。輸出側が、輸入地での輸入通関と輸入税の納付をすべて負担し、かつ、輸入側が指定する相手国の指定場所まで貨物を持ち込み、そこで輸入側に引き渡すまでのすべての費用と責任をおう、という意味です。
EXMと、DDPは、対局に位置するインコタームズで、同じ製品でも、そのコストや責任は、全く異なることがお判りでしょう。
この条件の違いが、貿易の契約書の中では、一切、言葉では説明されず、単に、インコタームズの3文字だけで示されるわけですから、いかにインコタームズが重要か、それを正確に理解し、交渉できないと、大変なことになってしまうことが、おわかりでしょう。
3、FOB
Free On Boardの略。日本語では、本船渡し、と訳されます。
FOBが、インコタームズの代表的な条件です。
頭文字にFがついているインコタームズは、F類型と呼ばれ、これは、輸出側が、輸入側に指定をされた運送人(船会社・航空会社等)に、輸出地で物品を引き渡す、という条件です。
そうすると、運送費用や、運送中の危険は、輸入側が負うことになります。
4、CFR
Cost and Freightの略。
これは、貨物の引き渡しに関しては、FOBと同じですが、運送人を輸入側でなく、輸出側が指定することになり、その仕向け地までの運送費と危険を、輸出者がおうという条件です。
以上、代表的なインコタームズですが、インコタームズは、非常に多くあり、その内容は、費用負担と責任をどこまでどちらが負うか、という組み合わせです。
貿易実務の、イロハは、このインコタームズですので、専門的に勉強したいかたは、是非、インコタームズの世界から、貿易に足を踏み入れてみてください。
以上、参考にしていただければ幸いです。
続く