相続税と贈与税は、今後、どんどん厳しくなる
企業(一般的には株式会社)は、法律上、法人という権利主体であり、会計上も継続企業(ゴーイングコンサーン)という原則があります。つまり、代表者や株主総会を構成する株主が変わっても、企業自体は、廃業や倒産をしない限り、「永遠の命」があることが前提となります。
一方、個人は、民法上、自然人という権利主体であり、「死」という終期が定められています。死によって、その財産は、すべて相続の対象となります。相続を契機に、その個人の活動の成果を、再配分する民法上の相続が動き出し、相続人に財産が否応なく分割されます。同時に、相続人には、相続税という税が課税されます。相続とは、個人が生前に獲得した財産の相続人への配分であり、相続税とは、財産の社会への再配分です。
この点が、企業と個人の財産の、最も大きな違いです。
企業に帰属した財産は、その企業が清算などの廃業をされない限り、永遠にその法人に帰属させて拡大を続けることが可能となりますが、一方、個人に帰属した財産は、死によって、再配分されます。個人がいかに、所得税引き後の巨額な財産を作っても、相続が複数回発生するなかで、その財産は再配分されて解体されるのが、日本の仕組みです。
相続税、そしてそれを補う贈与税は、法人税などの税が多くの軽減措置が稼働するのとは対照的に、今後、どんどん厳しくなっていくことは間違いありません。
法人や個人が努力をして手にした収入によって構築した財産をはく奪することは、私有財産制を保障する自由主義社会では許されません。一方、「濡れ手に粟」で財産を相続するということを許せば、社会は、階級的な格差が開き始めます。自分で努力をした企業やヒトの法人税や所得税は緩和をしつつ、「濡れ手に粟」を許さずに、その相続や贈与財産を、再配分する政策は、多数派である「持たない国民」の支持を得られやすい政策であり、社会の格差の是正にとって、不可欠です。そのため、今後、日本社会では、平等課税である消費税と、「濡れ手に粟」を許さないための相続税・贈与税が、徴税の基本になっていくことは、もう止められない状況です。
相続税の評価を下げるためには、うわもの(建物)を建てて貸す
勿論、そんな中でも、相続税を大きく引き下げる手法が、幾つか、現在でも認められています。
その中の代表的な方法が、所有土地に建物を建てて、賃貸物件化するという方法です。
この方法で、建物建設のための借入金をつくり、相続税評価額を土地・建物ともに下げて、相続税を乗り切ることは、多くの資産家がとる基本的な手法です。
土地を所有する地主にとって、建物の建築費をかけずに、うわものを建てる手法が、等価交換
しかし、土地を所有している資産家の方でも、借入金を起こして、建物を建てるというのは、非常に高い事業リスクが伴います。できれば、このような事業リスクをとらずに、建物を建て、しかも相続税対策をしたいというのが、土地所有者の資産家の方の本音です。
そこで、注目される手法が、等価交換です。
等価交換は、土地所有者が土地を事業に提供し、一方、建物は別の企業が建設し、そのうえで、出来上がった建物の区分所有とそれに伴う敷地権を、土地と建物の評価額に応じて、配分する手法です。
資産家は、この建物の区分所有不動産を賃貸で運用すれば、資産の相続税評価額を大きく圧縮することができます。
土地を提供する資産家は、資金の出資をせずに、所有する土地だけを提供して資産を建物に換えられ、大きく資産の付加価値をあげることができ、しかも、土地だけ所有して相続に供する場合に比較して、大きく、相続税を減らすことができます。
一方、建物を建築する企業は、土地を購入したり、定期借地を設定するコストを削減して、不動産事業を行うことができ、投資額を抑えて事業を進めることができます。
双方にとって、有利な事業になることから、等価交換方式は、不動産事業の基本になっています。不動産会社でなくても、一般の事業会社が、余剰資金の運用手法として不動産事業を考える場合にも、非常に有効な方法です。
企業の総務の方が、会社の資産の運用手法の一つとして、知っておられるとよい手法の一つです。
以上、参考になれば幸いです。
続く